Moist

網田という町の話を書いてみました。 すべてフィクションですが 場所はホントにあります。素敵な町です。

13話 愛子さん

 

多分私たち3人は

 

よくわからない何とも言えない

 

不思議な

 

そんな感覚におそわれていると思う

 

 

「 ・・ここまでつながると・・

  まじでこえぇ~わ・・・」

 

 けんじがぼそっと呟いた

 

 

 確かに ホント・・・

 

 

「おじいちゃん どうしてその女の人が

 お姫さまの 生まれ変わりだってわかったの?」

 

 

「 ん~~・・ そうじゃなぁ・・

 話は長くなるんじゃんがええか?」

 

 

「 おじいちゃんいつも長いよ(笑)」

 

 

 なおの言葉で緊張していた心がほぐれた

 

 

「あの人は 戸口愛子さんっていう女学校へ行ってた

 女性だったんじゃが

 昔 わしが小学生の頃 神社の裏の空地で 

 友達と火遊びしてたんじゃ

 

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 そうしたら

 火をつけて間もなく

 バケツをもった女の人がきて

 水をかけて 火を消したんじゃ・・・」

 

 

 

 

 「 ふぅ~~~!! 間に合った!

  危ない所だったわぁ!!!」

 

 

 

  いきなりの事で

  わしらは 

 

 「 こらぁ!! 何すんじゃぁ!!」

 

  ってケンカごしで愛子さんにかけよったんじゃが・・

 

 

  その数分後・・

 

  竜巻のような突風がおこり

 

  わしらも愛子さんも

  

  そして その辺にあったものが

 

  その風によって 飛ばされたんじゃ

 

 

  わしらは ぞっとした

 

  もし そのままここで火遊びしていたら

 

 神社やこの辺が火事になっていたかもしれないから

 

 

 「 火遊びしちゃだめよ!」

 

 

 そう言って愛子さんとその日は別れて

 

 

 でも・・

 

 愛子さんの事が気になって

 

 わしは 探して

 

 愛子さんを見つけ出したんじゃ

 

 

「 あら?どうしたの?」

 

「 あの・・・ 昨日の・・ 」

 

 

 そう言いかけた時

 

 口を手でふさがれて

 

 

「 しぃ~~!!! ちょっとこっちにきて!」

 

 愛子さんの家から離れた川辺につれていかれた

 

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「 ・・・ あのね

 あの事誰にも言わないでほしいの!

 友達にも言っといて!!」

 

 

 「・・え?・・なんで?」

 

 「・・・ だって・・ 

 変な人に思われるでしょ(笑)」

 

 そう言ってにこっと笑った。

 

 

 それから 時々愛子さんと

 話すようになった

 

 愛子さんは時々未来が見えるようで

 予知夢のような感じで

 夢でああいった事をみるらしい

 

 

 この前のわしたちの火遊びは

 あのまましてたら

 突風で火が周りに燃え移り

 神社が燃えて 大火事になって

 もちろん わしたちも火事に逃げ遅れて

 死んだという夢をみたらしい

 

 

 そしてある時

 

 

 「わたしね、最近よく夢を見るの・・

  お姫様の夢を・・」

 

 

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 「お姫様?」

 

 「 そう 網田城にいたお姫様。」

 

 わしはその時 網田に城があったことも

 知らなかった。

 

 

 「とても皆に愛されてたお姫様みたいなの

  でもね・・

  とても悲しい顔をして海を見てるの」

 

 

愛子さんはいつも不思議な話をする

網田城の話もそうだけど

 

 

その頃まだ戦争中で

いつ戦争が終わるかわからない

 

 

でも

もうすぐ終わるよと

 

でも

すごい犠牲があるの・・・って

 

 

 

8月のすごく暑いころ

 

1つ目の原子爆弾が広島に投下された

 

 

ラジオで聞いた時

 

小学生だったわしは意味がわからんかった

 

でも

 

大勢の人が亡くなったというのは

 

わかった

 

 

そんな時

 

愛子さんの兄弟が

 

商売で長崎に行くことになった・・・

 

 

わしは 愛子さんに会いに

家に行くと

 

「 にぃ~さん!!お願い!いかんでぇ!!!」

 

玄関先で 愛子さんが叫んでいた

 

 

「 俺らがいかんと お前たち食べていけんだろう!!」

 

愛子さんのお兄さんは愛子さんを押し倒して

出ていくところだった。

 

「 にぃ~~さん・・・ お願いいかないで!!」

 

 そう一言言った後

 

 愛子さんはナイフで自分の胸を刺した

 

 

 わしは

 

 何もできず

 

 ただ茫然と

 

 愛子さんが倒れた姿をみていた

 

「 愛子ぉ~~~~~!!!」

 

 お兄さん達が

 

 愛子さんにかけより

 

「 おい!お前!医者!医者よんでこい!!」

 

 わしにお兄さんが言って

 そこでわしも我にかえり

 

 走って医者を呼びに行った

 

 

「 にぃ~~さん・・ お願いいかんでぇ・・・」

 

「わかったから!

いかないからしゃべるな!!」

 

「・・ よかった・・・」

 

 

 そういって愛子さんは

 目をつぶり 冷たくなっていった・・

 

 

 「 おじいちゃんその日って・・」

 

 「 そうじゃ 長崎が原爆が投下される日じゃ」

 

 

 「愛子さんはたぶんこの原爆の夢もみたんじゃろうな・・」

 

 

「でも でも 自分が死ぬことないじゃん!!」

 

ずっと黙っていたけんじ

信じられないといった顔で話した

 

 

「 わしも そう思う・・ でも

 そうでもしないと止められないって

 わかってたんじゃろうな・・・」

 

 

3人とも何とも言えない気持ちになった

 

「 死ぬことないじゃん・・・」

 

 私も 小さくつぶやいた