14話 未来が見える
それからしばらくの沈黙が流れ
なおのじーちゃんが話を始めた。
「そして、戦争も愛子さんが言う通り終わって
戦後、わしは毎日を無我夢中に生きた
そして、ある時
わしが20歳になったとき大学の図書室で
宇土に関する本に出会った
しかし、その本には
網田城に関する話は1行しかなかった。
その時、久しぶりに愛子さんの事を思いだした
愛子さんの言ってた話が気になりだし
わしは、ありとあらゆる本を調べて
お姫さんの事を調べたんじゃ。」
なおのおじいちゃんは
愛子さんの写真を見ながら
話し始めた
「 未来が見えたと言うのはどんな本にも
書いてな かったんじゃが、
その時期に起こった飢饉や水害など
被害があったという記録が
お姫さんがいた頃は、全くなかったんじゃ。
だから、もしかしたら
お姫さんは愛子さんのように
未来が見えたと思ったんじゃ・・・。」
なんだか
漫画みたいなSF映画のような話なんだけど
今私の中で起こってる状況をみたら
納得できてる自分がいた。
「お姫さんは、未来が見えたから
自分の命を引き替えに、
皆を守る事ができたんだと
おもったんじゃ。」
おじいさんのはなしを聞いたあと
私とけんじは無言で帰った。
あまりにも非現実的
でも
現実的・・・
頭の中の色んな話
今まであった出来事
ぐるぐるまわる・・
「なぁ・・ ゆい・・ 」
沈黙を破るようにけんじが静かに話始めた。
「 大丈夫か? 」
少しずれて並んで歩いてたから
前を歩くけんじがどんな顔をして話しているか
わからない。
でも
けんじのその言葉だけで
顔をみなくても安心できた自分がいた。
「・・ ちょっと・・ まいったな・・」
大丈夫って言おうと思ったけど
素直な自分の言葉がでてきた。
「 だよな・・」
小さく呟くようにけんじが言った。
それからまた
しばらく沈黙が流れて
私の家の近くまで来た時に
くるっと私の方に振り向いて
「 おれ・・
ゆい守るからな!」
そう言って
「じゃあな。」
と低く小さく呟いて
走って帰っていった。
夕日の逆光で
顔は暗くてよく見えなかった
ゆい 守るからな・・
昔
言われた覚えのある言葉
すっかり忘れていた・・
思い出したくもない
あの日・・・