Moist

網田という町の話を書いてみました。 すべてフィクションですが 場所はホントにあります。素敵な町です。

15話 7 years ago

・・・

 

あの日

 

私は、小学1年生くらいだったと思う。

 

 

夏休みに毎年 網田へ行くのが

 

 

毎年恒例の行事だった。

 

 

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1年生の私・・

 

網田の思い出が記憶になくなっているのは

 

多分 あの嫌な光景を見たからだと思う。

 

 

・・・

 

お父さんとお母さんと3人で

 

おばあちゃん達の家に行って

 

海で楽しく遊んで 

 

家族に囲まれて幸せな時間だったと思う。

 

 

 

でも・・

 

 

「 もう嫌なの!私を開放して頂戴! 」

 

「 どうしてだ!なんでいつもお前は勝手なんだ!」

 

 

最近よくお母さんとお父さん喧嘩してる。

 

いつもは私が寝た後とかに

してるみたいだったけど

私・・・ 知ってるよ・・

 

 

今は

おばあちゃんの家の裏で

 

二人で言い合いしている姿を見つけた。

 

 

二人ともすごく怖い顔してる

 

 

私は 車の影からその様子をじっとみてた。

 

 

 

「 もう・・・ つかれたのよ・・

 

・・・

 

 

 別れましょう・・・」

 

 

お母さん

泣いてるのかな・・

顔を手で覆って座り込んでる。

 

 

 

 「・・・ わかった・・」

 

 

 

お父さん

小さく呟いて

うつむいたまま

その場を離れていった。

 

 

 

私も

 

なんだかよくわからないけど

 

すごく

 

嫌なものを見た気分になり

 

後ずさってから

 

家の敷地内から走った。

 

 

「 ゆい!!!」

 

 

お母さんが私を見つけて

 

私を呼んだ

 

でも

 

聞こえないふりして

 

そのまま走った

 

どこに行くとかまったく決めてないけど

 

とりあえず

 

あの場所から逃げたかった。

 

 

 

こんなに走ったのは初めてかもしれない

 

あてもなく

 

ただ

 

ただ

 

前を見て走り続けた

 

 

・・・

 

 

「おい!」

 

「おいったら おい!」

 

 

私の腕をつかまれて

 

ようやく意識が戻った

 

目の前に けんじがいた。

 

 

遊んで帰る途中だったのか

青いTシャツは少し汚れて

手には虫取り網をもっていた。

 

 

 

「・・・ なんで

なんで泣いとんの?」

 

 

言われて初めて気が付いた

泣いてた・・・

 

 

 

「・・ どうしたん?

 誰かに叱られたんか?」

 

 

私は声がでなくて

ぶんぶんと頭を横に振った。

 

 

「・・・ なら どっか痛いんか?」

 

 

「 ・・・  」

 

 

「 大丈夫か?」

 

 

 その言葉でまた涙があふれてきた。

 

「 うわぁ!! わぁ!! ちょいとタンマタンマ!!

 泣いたら俺が泣かしたみたいじゃんかぁ!!」

 

 

  

 

  でも涙は止まらない

 

 

 けんじは 頭をわしわしかきながら

 

 

 「 こっち!」

 

 とぶっきらぼうに言って

 

 私の腕を引いて神社の境内に連れて行った。

 

 

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「 とりあえず ここで涙とめろや!」

 

 

 境内の中は誰もいなくて

 しーーんっと静まりかえってる

 

 

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 お参りするところの裏に座れそうな大きな石があり

 そこで涙が止まるまで

 二人で座ってた。

 

 

 「・・・ ありがと・・」

 

 

 「 ええよ! はよ 涙とめろや」

 

 

 相変わらず不愛想な言い方だけど

 これがここの方言らしく

 毎回ながら喧嘩ごしに聞こえる。

 本人はそういうつもりないらしいんだけど・・

 

 

  涙が止まったころ

  けんじが話しかけてきた。

 

 

「 なんかあったんか?」

 

 

「・・・」

 

 

「 あっ 言えたくなかったらいいわ!」

 

 

「 ・・・ お父さんお母さんが喧嘩してるの・・

 お母さん泣いてるの・・

 お母さん達離婚するかもしれない・・・」

 

 

 「離婚?  離婚って何?」

 

 「お父さんとお母さんが一緒に住まなくなること」

 

 「 ぇええ!! 大問題じゃん!」

 

 

 私は1年生にしてはませてるんだと思う。

 けんじはこの時本当に 小学1年生って感じで

 意味がわかってんのかわからないけど

 一人でわぁ~わぁ~言ってた

 

 

 「 じゃぁ!誰と一緒にくらすの?」

 

 

 「・・・わからない・・・ 」

 

 

 「 ならさぁ! ここに住めばいいじゃん!

   そしたら毎日遊べるじゃん!」

 

 

 

  「・・・・・。」

 

 

 

 「 おれ! ゆいのこと守るから!」

 

 

  また涙が止まらなくなって

 

 

  それをみてまたけんじは 

  おたおたしてる

 

 

  「 ありがとう・・・」

 

 

 そういったあと

 

「 ゆいぃ~~~」

 

遠くから お母さんの声がした

 

 

「 どうする? 逃げるか?」

 

 

真剣なのか冗談なのかよくわからない顔して

私の右手をにぎった

 

 

 

「 ・・・ お母さんとこいく・・」

 

 

 

けんじはうんとうなずいて

私の手を引いて

お母さんのところへ連れて行った

 

 

「 ゆい・・・」

 

 

お母さんはすまなそうな顔して

私のところにきて

少しかがんで

 

 

「 ごめんね・・・」

 

 

 そう言って

 私を抱きしめた。

 

 

お父さんと離婚するんだと

この時確信した。

 

 

 

 

夕方の便でお母さんは

東京へ帰っていった

 

私とお父さんは

2日後に東京へ戻った。

 

 

お母さんの荷物は家からなくなっていた。