4話 おばあちゃん
家は嫌い
だって おじいちゃんが認知症だから
そのせいでこんな場所に
来ることになったから…
おじいちゃんがいるこの家が嫌い
でも そんなこと言えない
お父さんとおばちゃんが
悲しむ顔みたくないから・・
「はいはい たつおさん
ボロボロご飯こぼしてるわよ」
「・・ぁあぁ~・・・」
2年前までは
まだ普通だったおじいちゃん
昨年 腰を悪くして
ネーブルの仕事をしなくなってから
どんどん認知症が加速していった・・
おばあちゃんだけでは
仕事できないので
お父さんが仕事を辞めてここに帰ることにしたんだけど・・
農家なんてやめればいいのに・・・
おじいちゃんが
ボケなければよかったのに・・
そしたらあたし
東京にいられたのに・・
嫌な自分がぐるぐる・・
こんな自分も嫌だけど
あんなおじいちゃんはもっと嫌!
だいたい
昔っからうるさくておばちゃんを
奴隷みたいにあつかってた
おじいちゃん
おばあちゃんだって
あんなおじいちゃん嫌だろうし
早く楽になりたいだろうし・・・
「ごちそうさま・・」
なんかそんなこと考えてたら
食欲なくなった
「 ゆいちゃん 具合でも悪いの?
大丈夫?」
「・・・・ ちょっと・・
疲れただけ・・ 大丈夫・・」
おばあちゃんごめんね・・
部屋に戻ったら なんだかどっと疲れて
宿題もしないで 眠てしまった。
・・・
深い 眠りの中
誰かの泣き声がして目が覚めた
誰だろう・・・
ブルーがかった景色の中
私は 夏の制服で
どこかをあるいている・・
どこか?
あっ・・ ここ私の家だ
ミンミンゼミが鳴いている・・
暑い夏
汗が流れる
どこからかテレビの音が聞こえた
「 今日は終戦記念日です・・」
誰か泣いてる・・・
ブルーがかった 景色の中
泣いている方に歩いて行った
「 おばあちゃん・・・」
・・・
パ ァ ~~~ッ
目の中に強い光が入ってきて
目が覚めた。
どくどくどくどくどく・・・・
また あの感覚と一緒だ
たぶん・・ これって
また予知夢?
泣いてるおばあちゃんのそばで
寝ていたのは
おじいちゃん・・
おばあちゃん 泣いてた・・
そして 寝ているおじちゃんに
私はどうしたらいいの!!
たつおさん
あたしを置いていかないで
って・・・
おばあちゃん
あんなに毎日苦労してるのに・・
布団で寝ているおじいちゃんに
すがるように・・
泣いてた
あんなおばあちゃん初めて見た・・
窓の外は薄暗い
朝 まだ5時前だった
でも 台所の電気はついてて
おばあちゃんが
朝ごはんの支度をしていた
「 おはよぉ・・」
「 あら
ゆいちゃん早かったねぇ~ 」
いつもの笑顔のおばあちゃんが
そこにいて・・
なんだかほっとした。
「体調はよくなったかい?」
「 うん・・ 大丈夫」
トントンと軽快なリズムで包丁で切る音が心地よい・・
「。。 ねぇ。。 おばあちゃん。。」
「 ん? 」
おばあちゃんは
お味噌汁を作りながら
顔だけこちらをむいた
「おばあちゃんって
なんでおじいちゃんと結婚したの?」
目をまんまる大きく見開いて
またいつもの笑顔の目になり笑いながら私の隣に座った
「 まぁ~ そんな話
朝から言うのかい?(笑)」
「 あっ・・ ごめん・・」
「 いいのよ。 ゆいちゃんのお父さんにも話したことないかもね。」
その時のおばあちゃんの顔は
恥ずかしそうだったけど
少女のようなキラキラした目を
していた。
「 おじいちゃんとは
恋愛だったのよ。」
なんか意外!
お見合いとばかり思ってた・・
おばあちゃん曰く、 おじいちゃんとは高校へいく電車で
よく会う 男の子だったんだけど
ある日 電車で酔っぱらいのおじさんに絡まれてるところを
助けてくれたらしい
それから よく話すようになって
朝と夕方の電車がとても楽しみだった。
その時はまだ 付き合うとかそういうのがなかったんだけど
1学期が終わった 夕方の電車で
2学期までこの人とは会えないんだぁ・・ と思ってたら
「 今度 赤瀬で花火大会があるんだけど 一緒にいかないか?」
って誘ってくれたらしい。
「生まれて初めてのデートで
すごくドキドキしたわぁ。
2人とも
しばらくあってなかったから
色んな話をしながら
海岸線をあるいたわぁ。
その時 今でも忘れないわぁ・・・
大きな花火が上がり
その時にたつおさんが
好きだ!
結婚してくれないか!
って 言ってくれたのよね。」
はっ?
私は 目をまん丸した
「おかしいでしょ?
付き合おうじゃなくて
高校生なのに
結婚しようだからねぇ~(笑)」
そのあと
おじいちゃんの言い間違いだったらしく
二人で顔を合わせて笑ったらしい
「 それから 何年か付き合って
結婚したのよねぇ・・・」
おばちゃんは寝室のおじいちゃんに
目を向けた
「 たつおさんとあの花火
もう一度みたいわねぇ・・」
この花火大会は
今はなくなっているらしい・・
夢で
おばあちゃんが泣いている姿が
脳裏によみがえる・・
「 おばあちゃん・・
ありがとう・・」
「 あらあら
話こんじゃったわねぇ~(笑)
ゆいちゃん ご飯の用意するわね 」
できるかな・・
私
できるかな・・・
1つの考えが頭から離れない